名誉毀損の対象となるか?
過払い金返還によりブラックリストとなった場合の名誉毀損成立の可否
一般的に名誉毀損を刑事事件として処罰されることはまれであり(表現の自由との関係により)、民事上の「不法行為による損害賠償請求」の対象とする扱いが一般です。
過払い金返還によりブラックリストとなった場合の名誉毀損の成立と損害賠償請求の可否についても、民事上の「不法行為」の成立如何にかかってくるものと考えられます。
民法上の不法行為としての要件は以下のとおりです。
1 加害者の故意・過失
2 権利または法律上保護される利益の侵害
3 加害者の権利侵害行為と損害との因果関係
4 加害者の責任能力
過払い金返還によりブラックリストとなった場合の不法行為成立の可否という視点から考えると、上記要件の中でまず「1 加害者の故意・過失」があるかが問題となると思われます。業者側としては「債務整理としての司法書士や弁護士の介入」や「債務の圧縮・減額を行った」事実を信用情報機関に「登録しなければならない立場」(登録が義務付けられている事項)であることが業者側の言い分となるでしょう。
そうなると「故意・過失があったとまではいえない」との判断がなされてしまうことが考えられます。
そうであるならば、そのような事実の登録を義務付けている信用情報機関に責任があるか?ということになりますが、信用情報機関に「みなし弁済を実質無効と判断した最高裁」が出たことにより、過払い金の返還請求の場合には「債務整理としての事故情報登録はしてはいけない」との決まりを作るべき法的義務があったか?(あるか?)という部分の問題となると「法的義務」まで認めることは非常に困難であると思われます。
また、「2 権利または法律上保護される利益の侵害」について、信用情報上事故となったことにより実質的にどのような「損害」が発生したか?
という点も難しい問題として残るでしょう。
信用情報機関の早急な対応改善を求めることが必要と思われます。
参考条文(民法)
(不法行為による損害賠償)
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
(名誉毀損における原状回復)
第723条
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
参考条文(刑法)
(名誉毀損)
第230条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(公共の利害に関する場合の特例)
第230条の2
前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
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